■開催日時:2012年11月11日(日)13:00~17:15

■会場:北海学園大学 豊平キャンパス 6号棟 C30番教室
(札幌市豊平区旭町4丁目1-40、地下鉄東豊線「学園前」駅にて下車。3番出口直結)
http://hgu.jp/access/
*今回の会場は北海道大学ではありませ ん。ご注意ください。

■研究会1(13:00~15:00)
13:00~13:30
(1)周菲菲さん(北海道大学大学院文学研究科 博士後期課程)
「反日感情と日本の観光イメージ―訪日中国人観光者を中心に―」
 今世紀の初めから発足された「観光立国」を過去3年間の日中観光市場で振り返ると、2011の東日本大震災により引き起こされた「風評 被害」と、2010年9月に発生した漁船衝突事件と、9月に発生した釣魚島の「国有化」といった情勢を受け、日本の観光イメージに思わぬ 揺れが生じつつある。揺れと「反日感情」との間に、どういうつながりがあるのか。こういう「揺れ」を通じて、どういう新たな関係性が生み 出されるか。本発表では、「反日感情」とイメージの揺れの関係性のメカニズムを読み解いていく。

13:30~14:00
(2)石井智美さん(酪農学園大学)・小宮山博さん(国際農林水産業研究センター)・ラブダンスレン・チャンツアルドラムさん(韓国全北 大学)
「内陸アジアの乳酒の現状と消費」
 ヒトは植物性の素材を糖源として酒を造ってきた。しかし遊牧民は、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダなどの乳から、ドブロク状の乳酒、さらに は自家で蒸留し蒸留酒をつくってきた。その飲用には酒という致酔飲料への嗜好性のほか、重要な民族的な健康飲料としての役割があった。 21世紀に入り遊牧生活が大きく変貌する中、伝統的な発酵乳酒の飲用現状と意識について報告する。

14:00~14:30
(3)川上絢子さん(酪農学園大学)・石井智美さん(酪農学園大学)
「日本人のシカ肉に対する意識」
 今日、我が国で食用肉と言うとウシ、ブタ、トリが挙げられる。しかし明治以前はシカ、イノシシだった。シカは殺生禁止令をはじめ、生類 憐みの令でも例外として食べられてきた。北海道では近年、エゾシカが増え農業被害や事故が増大して社会的な問題になっている。エゾシカを 資源として活用する方法が模索される中で、シカ肉の食用と意識について調査した。

14:30~15:00
(4)山本香織さん(酪農学園大学)・泰泉寺さくらさん(酪農学園大学)・石井智美さん(酪農学園大学)
「パラグアイにおけるマテ茶の飲用」
 茶は様々な地域で栽培され、独自の製法によって特有の味と、香りを持つ嗜好飲料である。飲用にはリラックス効果があるなど、世界各地で 日常的に好まれている。パラグアイでは年代を問わずマテ茶を愛飲している。その飲用方法は冷水抽出で、茶葉の消費が多く、共にマテ茶を飲 むことが重要なコミュニケーション手段なのである。日本でもマテ茶が販売されているが、マテ茶の歴史と飲用について報告する。

<15:00~15:15 休憩>

■研究会2(15:15~17:15)
15:15~15:45
(5)中村尚弘さん(Mount Allison University, CANADA)
「先住民コミュニティにおける参与型アクション・リサーチの批判的検討:平取町二風谷を事例に」
近年、先住民研究において、参与型アクション・リサーチ(PAR)の重要性が主張されてきた。PARは、研究者が研究者のための知識生産 を目的とする従来型の研究とは異なり、先住民の研究プロセスへの参加と研究成果の共有、さらには先住民コミュニティの積極的な変革をも目 的とする。本発表では、2000年代初頭より平取町二風谷で行われてきた各種のアイヌ文化促進事業を事例に、PARの先住民コミュニティ における展開の妥当性を検討する。

(6)~(8)特別セッション《北東ユーラシア地域のライフヒストリー》
15:45~16:15
(6)永山ゆかりさん(北海道大学スラブ研究センター共同研究員)
「語りから見たカムチャッカのアリュートル民族の文化継承」
 社会主義圏における民族政策の研究は法制度にかんするものが主流であり、個人の、とくに先住民の体験についてはほとんど報告されていな い。本発表ではカムチャッカの先住民であるアリュートル民族に焦点をあて、1930年代以降急激に進んだロシア化の中で、また1950年 代以降に進んだ寄宿制度による親世代との断絶を乗り越えて、固有の文化をどのように継承・実践してきたのか、ある文化伝承者の語りを中心 に報告する。

16:15~16:45
(7)丹菊逸治さん(北海道大学アイヌ・先住民研究センター)
「ニヴフの言語・口承文芸調査時に採録された『生活体験の語り』」
 言語・口承文芸調査の際に同時に採録される「生活体験などの思い出話」も、語り手にとっては意味を持って語られたものである。特にいわ ゆる「消滅の危機に瀕した言語」の場合には、改めて別の研究者によって生活体験にかんする聞き取り調査が専門的におこなわれるとは限らな い。本発表ではそういった「主たる調査目的から外れた語りの記録」について、ニヴフ語・ニヴフ口承文芸調査の例から考察してみたい。

16:45~17:15
(8)滝口良さん(北星学園大学非常勤講師)
「社会主義体制下のモンゴルにおける個人商の活動:ポスト社会主義国におけるインタビュー・データの利用可能性について」
 本発表では、ポスト社会主義国において、「社会主義時代という過去」に対する個人的体験や記憶が有する資料的価値の検討を目的とする。 具体的な事例として、社会主義体制下のモンゴルにおいて非合法な個人商を営んでいた一人の女性からのインタビュー・データをとりあげる。 このデータの検討を通じて、社会主義時代の記憶をめぐる個人の「語り」が、公式の歴史とは異なる社会主義体制下の日常生活の一側面を照ら しだす重要な資料となることを示す。

*終了後、懇親会を予定しています。