■開催日時・会場

日時: 2008年7月13日(日)13:30~
会場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)309教室
   (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)

■プログラム
<研究会>
(1)13:30-14:00
高泉 拓 氏(北海道大学)
「暴力がいかに正当化されるか―ある発砲の正当性とアメリカ「銃文化」」
暴力がいかに正当化されるか」をある発砲事件(服部君事件)の刑事裁判の論議を通じて考察する。資料として公判資料を、方法論として実践論、エスノメソドロジーを用いる。陪審裁判の中で、検察側は被告の発砲を「合理的」でないでないと糾弾する一方、弁護側は発砲者と被害者を「我々/よそもの」の枠組みで論じつつ、銃(を用いる実践)を地域共同体の中に位置づけた。この事例を通じ、銃やその暴力の「正当性」、アメリカ「銃文化」の様態を考察する。

(2)14:00-14:30
スーディ K 和代氏(札幌市立大学)
「沖家室島在住高齢者のライフスタイルと健康度、及び支え合いの考察 」
島民196人で日本最高の高齢者人口74%(2006年)、平均年齢68.3歳(全国平均:43.4歳)の高齢者の島、沖家室島の高齢者は自立度が高く、実態調査(計測、ライフスタイル インタビュー等)の結果、高血圧症は比較対象地と比べて有意に低い(p=0.007)などが明らかになったが、他に二つの特徴がある:
①この島は明治当初からハワイ州を中心とする海外へ移民を多く送り出したが、現在でもそれら移民の子孫と島民が強く繋がっており、ユニークな交流関係が持続されている。
②島民同士の支え合いの仕組みにあり、それにより高齢者が島で生活の持続が可能になっている。限界集落の定義に当てはまるこの島の高齢島民が支え合う仕組み(文化)と島民の高い自立度の関連を考察する。

(3)14:30-15:00
福岡 イト子氏(元旭川竜谷高等学校教諭・郷土部顧問)
「高校生に何ができるのか-旭川竜谷高等学校郷土部『上川アイヌの研究』40年記念復刻刊行をめぐって-」
”滅びゆくアイヌ民族”といわれていた1960年代、高校生に何ができるのか。身近にアイヌの古老たちが、伝統文化を確かに伝承し誇り高く生きている。何としてでもアイヌ文化を後世に残したいとの意気込みが時を超え、40年記念復刻刊行に至った。聞き取り調査と丁寧な手書きの図版は、現在では貴重な資料として小学校総合学習に、ひいては北海道教育大学教育学部旭川校・小樽市立小学校教諭等協力、小学生用「アイヌ語教科書」発刊。副教材作成中であるが、利用状況の今日的課題を提起し報告とする。

<休憩>
15:00-15:15

(4)15:15-15:45
小坂 みゆき氏(北海道大学)
「中国朝鮮族における年中行事の変容 」
中国の少数民族である中国朝鮮族の伝統的行事(年中行事)を取り上げ、現地での調査をもとに、その中で変化しあるいは廃れたものと現在なお維持されているものがあることを報告する。変化したり廃れたりするものについてはその要因としてどのようなものがあるか、維持されているものについては何故それが維持されてきたか、社会環境・経済事情の変化などもふまえてその理由を検討した結果について報告する。

(5)15:45-16:15
Yayuc Napay(ヤユツ ナパイ)氏(京都大学)
「原住民部落における観光事業と伝統文化教育の連結――司馬 庫斯を例として」
1980年代以降、台湾では観光事業が発展し、原住民が居住している地区 は次々と観光地となってきた。「原住民観光」という潮流では、伝統文化が部落発展の最も重要な要素 であり、それを資源として、観光活動と連携して部落を発展させる。そこでは経済的側面だけではなく、教育実践も重視されている。報告者は観光事業と教育のかかわりを中心に、1つの部落を例にして、 具体的なケーススタディを通じて考察する。