■開催日時・会場

   日 時: 2012年7月8日(日) 13:00~17:15       
   会 場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)W309教室
         (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)

■研究会 (13:00~16:45)

13:00~13:30
(1)井上淳生さん(北海道大学大学院文学研究科 博士後期課程)
「縁をつくる試み:カップル化が生むつながりと分離」
 本報告の課題は、日本の社交ダンスを事例に、「ヨコ」のつながりによって結びついた集団において構成員が互いに関係し合う様相を考察す ることである。人類学ではこれまで、集団における構成員同士の結びつきを説明する際に、血縁や地縁という「タテ」のつながりを表す概念の 他に、社縁や約縁といった「ヨコ」のつながりを表すものも使用されてきた。本報告では特に後者の縁によって結びついた集団の例として日本 の社交ダンスに注目し、「ヨコ」のつながりによって結びついた集団が日本の文脈においていかなる位置を占めるのかを検討する。

13:30~14:00
(2)小西信義さん(北海道大学大学院文学研究科 博士後期課程)
「なぜ、おじいちゃんは雪はねがうまいのか?~採炭と造材からルーツを探る~」
 2011年・12年冬季、旧産炭地域美流渡地区で人力除雪に関してのフィールドワークを展開する中で、興味深い語りと観察結果を得た。 一つ目は、スコップの握り方に作業者の工夫が見られたこと、二つ目は、除雪道具を用いず、雪を踏み固めている人びとがいたことであった。 本発表では、この二つの除雪技術のルーツを、作業者がかつて従事していた採炭業及び造材業に関する聞き取り調査と文献資料によって確認し た内容を報告する。

14:00~14:30
(3)高泉 拓さん(札幌大学 非常勤講師)
「銃「文化」の生成:1992年日本人留学生射殺事件を通して 」
 1992年にアメリカ南部の郊外で、パーティに行こうとしていた日本人留学生が間違った家宅を訪問し、家主に射殺された。事件は、日 本、全米、地元でも関心を集め、裁判はより公的な性格を帯びていった。この後に行われた刑事裁判と民事裁判では、正当化の語り口、発砲の 正しさの基準、法的判断がまったく異なっていた。この二つの裁判の比較を通じ、社会規範や価値観に規定されたものとしてその発砲や銃文化 を捉えることができるのか、が検討される。

◇ 北海道民族学会 2012年度 総会 ◇

■開催日時・会場
   日 時: 2012年7月8日(日) 14:30~15:00
        
   会 場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)W309教室
         (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)
■総会(14:30~15:00)

<15:00~15:15 休憩>

■研究会  (続き)

15:15~15:45
(4)久井貴世さん(北海道大学大学院文学研究科 博士後期課程)
「江戸時代におけるツルと人との関係史―東日本における分布と季節移動を中心に―」
 現在の日本では、北海道、山口県、鹿児島県という限られた三地域がツル類の主な生息地となっており、北海道では周年、山口県と鹿児島県 では越冬期にみることができる。一方で、江戸時代のツル類は現在よりかなり広範な地域に分布し、季節移動の形態も多様なものであったこと が文献から確認できる。本発表では、江戸時代の「産物帳」の記載から明らかになった当時のツル類の分布と季節移動について、東日本におけ る事例を中心に報告する。

15:45~16:15
(5)梅木佳代さん(北海道大学大学院文学研究科 博士後期課程)
「エゾオオカミをめぐる歴史と文化―北海道アイヌのオオカミ観についての再検討―」
 過去の北海道におけるエゾオオカミ(Canis lupus rex)と人との関係に対する社会的な関心は高く、これまで約100年間にわたる考察の蓄積がある。しかし、その対象とされる事例が実際に適切かどうかはこれまで検討され ていない。
 本発表では特に北海道アイヌのオオカミ観について、先行研究に見られる記述とオオカミがあらわれるアイヌ口承文芸の内容との比較を行 う。その結果から、先行研究を再検討する必要性を指摘するとともに、従来は考察対象とされてこなかったオオカミに対する認識も明らかにす る。

16:15~16:45
(6)櫻間 瑛さん(北海道大学大学院文学研究科 博士後期課程)
「エスニック・シンボルとしての教会-現代ロシアにおける宗教と民族の交錯について」
 旧ソ連圏においては、ペレストロイカ以降に、民族復興と宗教的な自己意識の向上が見られた。そして、この両者はしばしば密接に関連する ものとして理解されている。
 本報告では、ムスリムが大半を占めるタタールの中で、ロシア正教を受け入れた集団とされ、近年自らを独自の民族とする運動も展開してい るクリャシェンを取り上げる。そして、彼らの教会に対する認識を通して、自身をムスリム・タタールといかに差異化しているのかを検討し、 現代ロシアにおける人々の民族的・宗教的自己認識の複雑な絡まり合いについて考察する一助としたい。

*発表者に予定されていた石原真衣さん(北海道大学大学院文学研究科博士後期課程)の「先住民族への道のり―近現代における「アイヌ民 族」の再編成に関する文化人類学的研究」は、本人の事情によりキャンセルとなりました。