■開催日時・会場

  日時: 2009年7月11日(土)14:00-
  会場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)309教室
       (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)

■研究会プログラム 14:00~16:25

(1)14:00-14:30
矢崎春菜さん(北海道大学大学院文学研究科 修士課程)
「アイヌの「山姥・山男」伝承をめぐって」
アイヌには様々な「妖怪」が伝承されている。本発表ではその中から「山姥・山男」の登場する物語を『日本昔話通観』をもとに収集し、アイヌの妖怪の地域的な特徴・性質の相違、また和人の妖怪との共通点や相違点について考察する。その結果、アイヌの伝承における「妖怪」に、特徴的な地域差(特に北海道と樺太の間で)が見られることが確認できた。

(2)14:35-15:05
久井貴世さん(北海道大学大学院文学研究科 修士課程)
「タンチョウと人との関わりの歴史―北海道におけるタンチョウの商品化及び利用実態を中心に―」
タンチョウGrus japonensis は、かつて北海道の各地に広く生息していたが、現在は主に北海道の東部に生息するのみで、大正期には絶滅したとまで言われていた。その原因の一つは、明治の混乱期における乱獲であるとされているが、タンチョウは明治以前から蝦夷地の名産品として活発に利用されてきた。
本発表では、タンチョウを減少させた要因の一つとして「タンチョウの商品化と利用」を取り上げ、その実態を明らかにするとともに、タンチョウの利用が始められた時期についても考察する。

<休憩 15:05-15:20>

(3)15:20-15:50
上原周子さん(北海道大学大学院文学研究科 専門研究員)
「多民族集落における紛争の抑制と協力の形-中国青海省海東地区の事例から-」
中国青海省海東地区A集落には現在、チベット族、回族、漢族が同居する。本集落では民族間の争いが日常的に勃発してきたが、近年はチベット族が紛争回避や予防を行うことによって民族間の争いが減少し、それと同時に協力関係の形成が促進されている。
本発表ではチベット族の語りから、彼らが民族間紛争を抑制する背景についての分析、考察を行う。そこから多民族共生のための新たな指針を探りたい。

(4)15:55-16:25
林美枝子さん(札幌国際大学 教授)
「新たな健康文化の創造 医療人類学から見た森林療法の取り組みについて」
補完・代替療法(Complementary Alternative Medicine CAM)の実施率が日本やオーストラリア、欧米各国などで急激に高まり、補完・代替療法に関する研究、及び政策的対応が開始されたのは1990年代のことである。日本のCAMは、医療先進国の中では最多の利用率を誇っているが、その効果や医療費への影響に関しての研究は2000年代に始まったばかりである。
本報告は、日本発の新たなCAMの創造とも言える森林療法に関して、その経緯と現在の取り組み状況に関して医療人類学の視点から報告するものである。

 

■開催日時・会場

  日時: 2008年12月7日(日)14:00-16:10
  会場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)309教室
       (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)

■プログラム:
(1)14:00-14:40
佐々木俊介さん・平野佑昴さん(札幌国際大学大学院地域社会研究科 修士課程)
「日本海北部鰊漁の復活の取り組みと文化的な背景について」
日本海北部の漁場に回帰した鰊に関して、その契機となった施策的取組みに関して、道庁や関連施設、団体における調査結果を報告する。また鰊漁に関するかつての文化的背景に言及しながら、鰊の回帰を受けて、あらたに生起した社会・文化的な動きに関しても考察する。

(2)14:45-15:25
遠藤真貴さん(北海道大学大学院文学研究科 修士課程)
「アイヌの「履物」に関する文献調査―『アイヌ民俗文化財調査報告書』を中心に」
アイヌの「履物」に関する過去の研究成果によると、アイヌが様々な素材の履物を自製し、状況に応じて利用していたことは明らかである。しかし、時代差や地域差、周辺社会の衣文化の影響は捨象されがちである。本報告は、アイヌの「履物」に関連する聞き取り資料を元に、本格的な和人の入植が始まる明治以降、北海道アイヌの衣生活における「履物」の位置付けはどのようなものであったかを考察する。 

(3)15:30-16:10
高橋靖以さん(北海道大学大学院文学研究科 専門研究員)
「十勝本別地方におけるアイヌ口頭文芸-特に散文説話について-」
本発表では音声記録と文献資料に基づき、十勝本別地方の散文説話について語りの形式や主な内容等の分析をおこなう。その結果、語りの形式が必ずしも一定しないこと、一部の物語に英雄叙事詩との関連がみられることを指摘する。

■開催日時・会場

日時: 2008年7月13日(日)16:30ころより(研究会終了後)
会場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)309教室

   (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)



 議事録



1.2007年度事業報告および決算報告

2007年度事業報告

(1) 研究会・総会の開催(詳細は会誌4号【通信】欄参照)
① 第1回研究会・総会
 2007年 7月 7日(土) 研究会14:00~16:30、総会16:30~17:30 北海道大学
 研究発表4件
 総会:2006年度事業報告・決算報告、2007年度事業計画・予算案、役員改選など
② 第2回研究会
 2007年 12月 16日(日) 14:00~15:40 北海道大学
 研究発表3件

(2) 講演会等の開催(詳細は会誌4号【講演会報告】欄参照)
① 2007年10月21日(日)北海道大学 佐々木史郎氏講演会 (日本文化人類学会北海道地区懇談会、北大文学研究科北方研究教育センターとの共催)
② 2007年12月16日(日)北海道大学 枡谷隆男氏講演会 (日本文化人類学会北海道地区懇談会との共催)
③ 2008年1月29日(火)北海道大学 A. カンチュガ氏講演会 (北大文学研究科北方研究教育センターとの共催、北大アイヌ・先住民研究センター後援)
④ 2008年3月29日(土)北海道大学 ワークショップ「医療人類学の近未来を語る」 (日本文化人類学会北海道地区懇談会との共催)

(3) 会誌第4号の刊行(2008年3月刊行、102ページ)
論文3、研究ノート3、書評・紹介2

(4) シンポジウム等後援
① 第22回北方民族文化シンポジウム(網走市:11月3,4日)
② 日本文化人類学会 平成19年度「修士論文・博士論文発表会」(日本文化人類学会北海道地区懇談会主催、北海道民族学会後援)

(5) ホームページ更新
月平均2回ほど更新。2007年7月から現在までのアクセス数約1500件(のべ4300件)

(6) 新規入会5名

(7) 名簿の刊行(2007年度現在会員総数80名)
2007年度決算報告→承認

2.2008年度事業計画および予算案

2008年度事業計画

(1) 総会の開催(第1回研究会と同日開催) 

(2) 研究会の開催(2回:7月、12月)

(3) 講演会等の主催/共催/後援(3~4回、日本文化人類学会北海道地区研究懇談会の後援を含む←従来の共催から変更)

(4)『北海道民族学』第5号の刊行(11月末日エントリー締切、12月末日原稿締切)

2008年度予算案→承認

■開催日時・会場

日時: 2008年7月13日(日)13:30~
会場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)309教室
   (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)

■プログラム
<研究会>
(1)13:30-14:00
高泉 拓 氏(北海道大学)
「暴力がいかに正当化されるか―ある発砲の正当性とアメリカ「銃文化」」
暴力がいかに正当化されるか」をある発砲事件(服部君事件)の刑事裁判の論議を通じて考察する。資料として公判資料を、方法論として実践論、エスノメソドロジーを用いる。陪審裁判の中で、検察側は被告の発砲を「合理的」でないでないと糾弾する一方、弁護側は発砲者と被害者を「我々/よそもの」の枠組みで論じつつ、銃(を用いる実践)を地域共同体の中に位置づけた。この事例を通じ、銃やその暴力の「正当性」、アメリカ「銃文化」の様態を考察する。

(2)14:00-14:30
スーディ K 和代氏(札幌市立大学)
「沖家室島在住高齢者のライフスタイルと健康度、及び支え合いの考察 」
島民196人で日本最高の高齢者人口74%(2006年)、平均年齢68.3歳(全国平均:43.4歳)の高齢者の島、沖家室島の高齢者は自立度が高く、実態調査(計測、ライフスタイル インタビュー等)の結果、高血圧症は比較対象地と比べて有意に低い(p=0.007)などが明らかになったが、他に二つの特徴がある:
①この島は明治当初からハワイ州を中心とする海外へ移民を多く送り出したが、現在でもそれら移民の子孫と島民が強く繋がっており、ユニークな交流関係が持続されている。
②島民同士の支え合いの仕組みにあり、それにより高齢者が島で生活の持続が可能になっている。限界集落の定義に当てはまるこの島の高齢島民が支え合う仕組み(文化)と島民の高い自立度の関連を考察する。

(3)14:30-15:00
福岡 イト子氏(元旭川竜谷高等学校教諭・郷土部顧問)
「高校生に何ができるのか-旭川竜谷高等学校郷土部『上川アイヌの研究』40年記念復刻刊行をめぐって-」
”滅びゆくアイヌ民族”といわれていた1960年代、高校生に何ができるのか。身近にアイヌの古老たちが、伝統文化を確かに伝承し誇り高く生きている。何としてでもアイヌ文化を後世に残したいとの意気込みが時を超え、40年記念復刻刊行に至った。聞き取り調査と丁寧な手書きの図版は、現在では貴重な資料として小学校総合学習に、ひいては北海道教育大学教育学部旭川校・小樽市立小学校教諭等協力、小学生用「アイヌ語教科書」発刊。副教材作成中であるが、利用状況の今日的課題を提起し報告とする。

<休憩>
15:00-15:15

(4)15:15-15:45
小坂 みゆき氏(北海道大学)
「中国朝鮮族における年中行事の変容 」
中国の少数民族である中国朝鮮族の伝統的行事(年中行事)を取り上げ、現地での調査をもとに、その中で変化しあるいは廃れたものと現在なお維持されているものがあることを報告する。変化したり廃れたりするものについてはその要因としてどのようなものがあるか、維持されているものについては何故それが維持されてきたか、社会環境・経済事情の変化などもふまえてその理由を検討した結果について報告する。

(5)15:45-16:15
Yayuc Napay(ヤユツ ナパイ)氏(京都大学)
「原住民部落における観光事業と伝統文化教育の連結――司馬 庫斯を例として」
1980年代以降、台湾では観光事業が発展し、原住民が居住している地区 は次々と観光地となってきた。「原住民観光」という潮流では、伝統文化が部落発展の最も重要な要素 であり、それを資源として、観光活動と連携して部落を発展させる。そこでは経済的側面だけではなく、教育実践も重視されている。報告者は観光事業と教育のかかわりを中心に、1つの部落を例にして、 具体的なケーススタディを通じて考察する。

 

■開催日時・会場

  日時: 2007年12月16日(日)14:00-15:40(引き続き16時から講演会)
  会場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟309)
       (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)
■プログラム
(1)14:00-14:30
山田祥子氏(北海道大学)
「ウイルタ語口頭文芸の伝聞形式―サハリンにおける言語接触の可能性」
ウイルタ語の口頭文芸では、伝聞(人から伝え聞いた情報であること)を表わす言語形式がしばしば見られる。本発表では、第一に、このウイルタ語伝聞形式の特徴と機能について考察を述べる。第二に、近隣諸言語との比較をとおして、口頭文芸における伝聞形式がサハリンの地域的特徴であるという仮説を提示する。これにより、サハリンを中心とする地域の言語接触ないし文化接触のようすをさぐる可能性を拡げていきたい。

(2)14:35-15:05
荒山千恵氏(北海道大学)
「人類史における「音」の文化制度化の研究―日本列島出土の音響発生器具を例にして―」
人類史において、人工的な「音」を操作する行為が認められるようになるのは、どのような歴史的状況においてであろうか。本発表では、日本列島から出土した音響発生器具について取り上げ、それらがいつ、どのように出現・展開したのかを、文化制度化という点に着目し、考古学的な分析から検討する。人間と「音」との関わりについての研究は、民族音楽学、音楽史学、音楽心理学など、さまざまな分野に通じる共通テーマである。文字資料や録音技術のない過去の「音」文化をどのように再構成することができるのか、方法論的な模索も含めて発表する。

(3)15:10-15:40
中畑剛氏((株)カンペ共販北海道)
「沖縄県粟国島の水瓶(トゥージ)をめぐる文化の現在」
粟国島の水瓶トゥージは凝灰岩を彫り抜いて作ったこの島独自の民具である。川のない離島における天水を溜める道具で、飲み水や生活用水の確保のために工夫されてきたものであるが、島では門外不出といわれてきたものである。島の説話に登場するとき、水瓶は極めて民俗的な意味付けの対象となっており、水道施設、貯水施設ができた現在でも大切にされている理由もそこにある。本発表では島の人々が、現在水瓶をめぐってどのような文化を維持継承しているのかを発表するものである。