■開催日時・会場

   日時: 2010年7月11日(日) 14:00-16:20
   会場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)W309教室
         (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)

■研究会プログラム 14:00~16:20

(1)14:00-14:30
長堀智香子さん(札幌国際大学大学院 地域社会研究科 修士課程)
「ベナン共和国における周産期の国際医療協力と伝統的民俗への拘りについて」
 ベナン共和国は西アフリカに位置し、人口約750万人、46部族が混在する多民族国家である。発表者のこれまでの研究では母子保健指標の地域差は、その地域の保健施設利用環境による影響だけではなく、文化的な周産期における民俗の残存度による影響が関連していた。本報告は、そのデータ収集で得られたベナン共和国全12県の助産師の自由回答方式のアンケート内容と伝統的産婆(マトロン)への聞き取り調査の中から、妊娠・出産に関連する民俗への拘りについて発表する。そうした拘りを理解することで文化的健康観を尊重した国際医療協力の可能性が広がることについても言及する。

(2)14:35-15:05
滝口 良さん(北海道大学大学院 文学研究科 博士後期課程)
「文化の裏側:モンゴル・ウランバートル市のゲル地区の表象と管理」
 市場経済への体制転換以来、モンゴル国首都ウランバートル市では、近代的なアパート地区から区別された「ゲル地区」の問題が大きなものとなっている。伝統的移動式家屋である「ゲル」の名を冠したこの地区の表象は、「ゲル地区」に対する政策の変化と同様に変化してきた。本発表では社会主義時代の映画作品における「ゲル地区」と現代の都市文化における「ゲル地区」をとりあげ、「ゲル地区」をめぐる想像力の系譜をたどることをめざす。

<休憩 15:05-15:15>

(3)15:15-15:45
甲地利恵さん(北海道立アイヌ民族文化研究センター)
「アイヌ音楽の歌唱形式について―ポリフォニーの視点から―」
 アイヌの伝統的な歌謡の歌唱形式の種類について、最近の情報や調査結果を重ね合わせながら整理を試みる。とくにポリフォニーという視点を得てアイヌ音楽を捉えなおす試みの第一歩としたい。なおポリフォニーとはこの場合、複数の音高が同時に聞こえてくるタイプの音楽やその亜種をすべて包含する語として用いている。

(4)15:50-16:20
岩崎 グッドマン まさみさん(北海学園大学)
「バージャー調査からマッケンジー・パイプライン建設計画への変化」
 カナダ・イヌイットは土地諸権利の交渉を経て、現在、カナダ社会における経済基盤の確立へと歩んでいる。1970年代にバージャーによって行われたパイプライン建設へ向けた社会・文化影響評価の結果、建設計画を拒否し、狩猟の伝統を守ることを選択したイヌヴィアルイトたちは、約20年を経過した現在、パイプライン建設を受け入れ、新たな時代の扉を開けようとしている。2010年に入って公開されたマッケンジー・パイプライン建設社会・文化影響評価の内容を分析し、イヌヴィアルイトが直面している課題について考える。

 

■開催日時・会場

   日時: 2009年11月7日(土)15:20-17:20
            8日(日) 9:30-12:00
   会場: 道立北方民族博物館(網走市字潮見309-1)
   特集テーマ:「映像に見る文化の諸相」

≪博物館へのアクセス≫
 博物館へはこの時期、バスの便がありません。各自でタクシーなどをご利用ください。
  (網走駅前から1600円程度)

■プログラム

<1日目 11/7(土)>
(1)15:30-16:00
渡部裕さん(北海道立北方民族博物館)
「ペレストロイカ以降のカムチャツカの先住民社会」
 ペレストロイカ以降のソ連体制崩壊、経済危機は旧ソ連の市民生活を直撃した。カムチャツカの先住民社会もそれらの大きな影響を経て、今日に至っている。本発表ではペレストロイカ以降のカムチャツカの先住民社会のおかれてきた状況について、現地における聞取りをもとに、下記にあげた政治的経済的視点から報告する。
1.ソ連体制崩壊は先住民社会になにをもたらしたか-ソホーズ・コルホーズの解体が意味するもの-
2.ロシア経済の回復とカムチャツカの先住民経済
3.プーチンの政治改革と先住民の政治的環境の変化

(2)16:00-16:30
笹倉いる美さん(北海道立北方民族博物館)
「ウイルタの映像について」
1.ウイルタの画像的記録について概要を描く。
2.昭和13(1938)年に民俗学者の宮本馨太郎氏が樺太郊外のオタスで記録した16mmフィルムについて紹介、上映を行い、他媒体記録との比較及びオタスの変化について考察する。
3.北海道立北方民族博物館が平成9(1997)年から網走で行った映像記録について紹介するとともに、博物館が映像記録を行うことの意義について考察する。

16:30-16:50<休憩>

(3)16:50-17:20
加藤絢子さん(九州大学博士後期課程)
「サハリン少数民族と国境」
 日本統治下のサハリン南部では、1925年の日ソ基本条約による国交回復以後、国境取締法(1939年)を経て、日ソ国境警備が強化されていった。今回、1930年代以降の樺太庁予算関係資料をもとに、従来具体的な内容が明らかでなかった、樺太庁によるウィルタ、ニヴフなどの少数民族の諜報活動起用について報告する。

☆ 懇親会 18:15~20:00
   会 場:温泉旅館もとよし
   会 費:5千円
 
*参加ご希望の方は10月31日(土)までに北方民族博物館・中田さんへお申し込みください:
   nakada_atsushi☆hoppohm.org (☆を@に変えてください) 
   電話 0152-45-3888 FAX0152-45-3889

<2日目 11/8(日)>
(1)9:30-10:00
中田篤さん(北海道立北方民族博物館)
「タイガ型トナカイ牧畜の多様性について」
 ユーラシア大陸北部で営まれてきたトナカイ牧畜は、自然環境やトナカイの形態、管理する群の規模や利用方法などの特徴から、大きくツンドラ型とタイガ型に二分されてきた。しかし、タイガ型と分類されているトナカイ牧畜であっても、携わる民族の文化や地域的特性、時代背景などによって、その展開は多様である。本発表では、映像資料によってタイガ型トナカイ牧畜の事例をいくつか紹介するとともに、その多様性について考察してみたい。

(2)10:00-10:30
平田昌弘さん(帯広畜産大学)
「「遊牧の終焉」:映像記録の写実性と意義」
 遊牧民の定住化が、アジア大陸全域で確実に進行している。定住化にともなって、飼養する家畜の頭数が減少し、何千年かけて蓄積してきた遊牧技術の多くが消失しようとしているのである。それは、人びとの生活にとって、まことに寂しいことであり、人類の有形・無形の文化遺産を消失してしまうことは大変残念なことである。今回の発表では、遊牧の生業項目の中心にある乳文化を取り上げて、映像記録の内包する写実性と映像アーカイブの意義について検討してみたい。

10:30-10:50<休憩>

(3)10:50-11:20
大西秀子さん・石井智美さん(酪農学園大学)
「パラグアイと日本の喫茶の比較」
 お茶は世界中で一番飲まれている嗜好飲料である。日本では煎茶をはじめ、コーヒー、紅茶を含めた喫茶が盛んで、芸術として茶道も成立している。パラグアイでは日系人社会が形成され、そこでの喫茶は、日本からの輸入緑茶をはじめ、パラグアイ産のマテ茶が中心である。日本とパラグアイの喫茶を比べると茶葉の扱い、飲用方法、道具などは異なるが、茶を飲むことで、心がほっとするなど、特殊な役割を持つ食品であることが同じであった。

(4)11:20-11:50
篠藤シルビア真弓さん・石井智美さん(酪農学園大学)
「パラグアイの食と健康観~栄養学的視点から」
 日系人の見地から両国の食と健康観の比較を試みた。日本では食品の摂取において、老若男女を問わず「健康によい」ことがその選択基準になっていた。そしてサプリメントの消費量が多かった。パラグアイでは伝統的な芋のほか、肉と各種ジュース類の摂取量が特に多く、満腹になるまで食べている。そのため、肥満が社会において問題となっている。日常的に薬草を多く利用しているが、健康に対する関心は日本のように高くはない。

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●北方民族博物館では11/7(土)の午前中より、下記の事業を行っています。
10:00-12:00
学芸員講座「サケ餃子づくり」
講師:渡部裕さん(北方民族博物館・学芸主幹)
13:30-15:00
「環オホーツクの民族音楽事情」
講師:大島稔さん(小樽商科大学・教授)、甲地利恵さん(北海道立アイヌ文化研究センター・研究員)

詳細は、北海道立北方民族博物館HPをご覧ください。

■開催日時・会場

  日時: 2009年7月11日(土)14:00-
  会場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)309教室
       (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)

■研究会プログラム 14:00~16:25

(1)14:00-14:30
矢崎春菜さん(北海道大学大学院文学研究科 修士課程)
「アイヌの「山姥・山男」伝承をめぐって」
アイヌには様々な「妖怪」が伝承されている。本発表ではその中から「山姥・山男」の登場する物語を『日本昔話通観』をもとに収集し、アイヌの妖怪の地域的な特徴・性質の相違、また和人の妖怪との共通点や相違点について考察する。その結果、アイヌの伝承における「妖怪」に、特徴的な地域差(特に北海道と樺太の間で)が見られることが確認できた。

(2)14:35-15:05
久井貴世さん(北海道大学大学院文学研究科 修士課程)
「タンチョウと人との関わりの歴史―北海道におけるタンチョウの商品化及び利用実態を中心に―」
タンチョウGrus japonensis は、かつて北海道の各地に広く生息していたが、現在は主に北海道の東部に生息するのみで、大正期には絶滅したとまで言われていた。その原因の一つは、明治の混乱期における乱獲であるとされているが、タンチョウは明治以前から蝦夷地の名産品として活発に利用されてきた。
本発表では、タンチョウを減少させた要因の一つとして「タンチョウの商品化と利用」を取り上げ、その実態を明らかにするとともに、タンチョウの利用が始められた時期についても考察する。

<休憩 15:05-15:20>

(3)15:20-15:50
上原周子さん(北海道大学大学院文学研究科 専門研究員)
「多民族集落における紛争の抑制と協力の形-中国青海省海東地区の事例から-」
中国青海省海東地区A集落には現在、チベット族、回族、漢族が同居する。本集落では民族間の争いが日常的に勃発してきたが、近年はチベット族が紛争回避や予防を行うことによって民族間の争いが減少し、それと同時に協力関係の形成が促進されている。
本発表ではチベット族の語りから、彼らが民族間紛争を抑制する背景についての分析、考察を行う。そこから多民族共生のための新たな指針を探りたい。

(4)15:55-16:25
林美枝子さん(札幌国際大学 教授)
「新たな健康文化の創造 医療人類学から見た森林療法の取り組みについて」
補完・代替療法(Complementary Alternative Medicine CAM)の実施率が日本やオーストラリア、欧米各国などで急激に高まり、補完・代替療法に関する研究、及び政策的対応が開始されたのは1990年代のことである。日本のCAMは、医療先進国の中では最多の利用率を誇っているが、その効果や医療費への影響に関しての研究は2000年代に始まったばかりである。
本報告は、日本発の新たなCAMの創造とも言える森林療法に関して、その経緯と現在の取り組み状況に関して医療人類学の視点から報告するものである。

 

■開催日時・会場

  日時: 2009年7月11日(土)14:00-
  会場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)309教室
       (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)



 議事録



1.役員改選

 運営委員会から提案があった会長と運営委員の改選案を承認

2.2008年度事業報告および決算報告

2008年度事業報告

(1) 研究会・総会の開催(詳細は会誌5号【通信】欄参照)
① 第1回研究会・総会
 2008年 7月 13日(土) 研究会13:30~16:15、総会16:30~17:30 北海道大学
 研究発表5件
 総会:2007年度事業報告・決算報告、2008年度事業計画・予算案など
② 第2回研究会
 2008年 12月 7日(日) 14:00~16:10 北海道大学
 研究発表3件

(2) 講演会等の開催(詳細は会誌5号【講演会報告】欄参照)
① 2008年 5月27日(土)北海道大学 ユリ・シェイキン氏講演会 (北大文学研究科北方研究教育センター共催との共催、北大アイヌ・先住民研究センター後援)
② 2009年 3月15日(日)北海道大学 遠友学舎 「遊牧の民の調べ」コンサート (NPO法人北方アジア文化交流センター・しゃがぁとの共催、北大文学研究科北方研究教育センター後援)

(3) 会誌第5号の刊行(2009年3月刊行、78ページ)
論文1、研究ノート2、書評・紹介5

(4) シンポジウム等後援
① 第23回北方民族文化シンポジウム(網走市:10月18,19日)
② 日本文化人類学会北海道地区研究懇談会 秦兆雄氏講演会 (日本文化人類学会北海道地区懇談会主催、北海道民族学会後援)

(5) ホームページ更新
月平均2回ほど更新。2008年7月から現在までのアクセス数約1400件(のべ5700件)

(6) 新規入会8名

3.2009年度事業計画および予算案

2009年度事業計画

(1) 総会の開催(第1回研究会と同日開催) 

(2) 研究会の開催(2回:7月、11月)
   第2回研究会を11月7日(土),8日(日)に道立北方民族博物館(網走市)で開催予定

(3) 講演会等の主催/共催/後援

(4)『北海道民族学』第6号の刊行(11月末日エントリー締切、12月末日原稿締切)

2009年度予算案→承認

■開催日時・会場

  日時: 2008年12月7日(日)14:00-16:10
  会場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)309教室
       (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)

■プログラム:
(1)14:00-14:40
佐々木俊介さん・平野佑昴さん(札幌国際大学大学院地域社会研究科 修士課程)
「日本海北部鰊漁の復活の取り組みと文化的な背景について」
日本海北部の漁場に回帰した鰊に関して、その契機となった施策的取組みに関して、道庁や関連施設、団体における調査結果を報告する。また鰊漁に関するかつての文化的背景に言及しながら、鰊の回帰を受けて、あらたに生起した社会・文化的な動きに関しても考察する。

(2)14:45-15:25
遠藤真貴さん(北海道大学大学院文学研究科 修士課程)
「アイヌの「履物」に関する文献調査―『アイヌ民俗文化財調査報告書』を中心に」
アイヌの「履物」に関する過去の研究成果によると、アイヌが様々な素材の履物を自製し、状況に応じて利用していたことは明らかである。しかし、時代差や地域差、周辺社会の衣文化の影響は捨象されがちである。本報告は、アイヌの「履物」に関連する聞き取り資料を元に、本格的な和人の入植が始まる明治以降、北海道アイヌの衣生活における「履物」の位置付けはどのようなものであったかを考察する。 

(3)15:30-16:10
高橋靖以さん(北海道大学大学院文学研究科 専門研究員)
「十勝本別地方におけるアイヌ口頭文芸-特に散文説話について-」
本発表では音声記録と文献資料に基づき、十勝本別地方の散文説話について語りの形式や主な内容等の分析をおこなう。その結果、語りの形式が必ずしも一定しないこと、一部の物語に英雄叙事詩との関連がみられることを指摘する。