【2022年度 北海道民族学会第1回研究会・総会のご案内】→ 終了しました

 日頃より、北海道民族学会の活動にご支援、ご協力をいただき誠にありがとうございます。2022年度 第1回研究会・総会を下記の日時・会場・プログラムで行います。

 多くの会員の皆様のご参加をお待ちしております。

■開催日時   2022年6月12日(日) 13:30~17:30(予定)

■会場   酪農学園大学  C5号棟 203号(2階)

   〒069-8501 江別市文京台緑町582番地   TEL 011-386-1111(代表)   FAX 011-386-1214

キャンパスマップ https://www.rakuno.ac.jp/outline/facility.html

アクセスマップ   https://www.rakuno.ac.jp/access.html

※自家用車での来場可。JR大麻駅南口から203号教室まで徒歩15分。

■研究会(13:30-16:20)

開会あいさつ   北海道民族学会 平田昌弘会長

研究発表

(1)落合いずみさん(帯広畜産大学/准教授)(13:40-14:10)

「アイヌ語における上位起算法の再考―17世紀の記録「蝦夷国報告書」に照らして―」

 アイヌ語は20進法であり基底数は20の倍数であるが、基底数の間の数において前半は下位起算法、後半は上位起算法を用いると、落合(2021)は20世紀の資料に基づいて主張した。ところがアンジェリスにより松前において17世紀に記録されたアイヌ語数詞では上位起算法への切替えが見られず、専ら下位起算法である。元々下位起算法のみであったが、後に上位起算法も用いるようになったとも考えられそうだが、この変化の方向は通言語的にみても例がない。通常は上位起算法を失い下位起算法に変化する。そのためアンジェリスの記録した数詞は早々に上位起算法を失ったと考えられるが、その理由を和人との接触が濃密であった松前という土地の特殊性に求めることができるのではないか。日本語には上位起算法が無い。和人との交渉を円滑にするために、上位起算法を失った一種のリンガフランカ的なアイヌ語の数詞が松前で用いられていたのだろう。

(2)加賀田直子さん(北海道大学大学院文学院/博士後期課程)(14:10-14:40)

「移動する狩猟者と動物の身体 ー北海道斜里町の狩猟実践を事例に」

 狩猟において動物を探すことは目的地のない移動である。北海道斜里町に在住の狩猟者たちは徒歩、スキー、自動車など様々な形式で移動し、時に待つ。本発表では、狩猟における移動の身体経験としての側面に着目し、狩猟者の身体と動物の身体がどのような関係を持ちうるのか、アフェクト/情動論や人類学者ティム・インゴルドのアイデアから考察する。

(3)スクーチナ イリーナさん(北海道大学大学院文学院/博士後期課程)(14:40-15:10)

「翻訳者の(不)可視性―デジタル環境におけるライトノベルのアマチュア翻訳を事例として―」

 近年では、注文を頼りにするプロフェショナルな翻訳者と自発的に翻訳を行うアマチュアな翻訳者の間の差異が曖昧になりつつあるが、後者は主にオンライン・コミュニティーと交流しながら翻訳を作成するので、プロフェショナルな者より可視的であると考えられる。本研究は特にロシアにおける、オンラインで行われるライトノベルという日本の文芸ジャンルのアマチュアな翻訳を事例にするので、発表では翻訳者の(不)可視性とライトノベルの概念を通してロシアでの翻訳の現状を見ていく。

〈休憩〉(15:10~15:20)

(4)呉 納馨(ゴ ノウケイ)さん(北海道大学大学院文学院/博士後期課程)(15:20-15:50)

「日本のドラァグ・クイーンにおける身体とパフォーマンス ─札幌市の事例を中心に─」

 ドラァグ・クイーン文化は日本に流入してから、日本社会の文脈と結びついて変容が生まれたように見える。そこで、日本のドラァグ・クイーンの現状と関連する論考を軽く触れた上で、身体論、環世界、憑依観、アフェクト論の視座でドラァグ・クイーンたちの身体とその周囲の世界との関係、パフォーマンス現場でのあらゆる関係性及びかれらの身体における「憑依」という「生成変化」の実態についての空白を埋める可能性を検討する。

(5)冼 麗珊(セン レイサン)さん(北海道大学大学院文学院/博士後期課程)(15:50-16:20)

「エスニックツーリズムにおける地元民と外来者との付き合い」

 エスニックツーリズムによる伝統文化の破壊がよく議論されること対して、「伝統文化」の存在に疑問を抱いて、文化の動態的性質を強調する研究が増えている。ところで、観光活動の展開や地元民と外来者との付き合いの深化に伴い、文化の維持は研究者のスローガンに留まっておらず、実質の利益につながり、地元民の自文化を見直すきっかけとなる。一方、外来者に短期滞在の観光客以外に、商売などの理由で長期間の滞在をする長期滞在余所者たちもますます見逃していけない存在となっている。その長期滞在余所者は地元民と雇用関係、仲間関係、競争関係など複雑な関係にありながら、観光客から見て、長期滞在余所者は地域に詳しい「半地元者」であり、どちらにも「他者」とされる。

※上記の時刻は目安です。

※発表時間は30分(発表20分、質疑10分)とし、進行状況に応じて適宜休憩を入れることとします。

〈休憩〉(16:20~16:30)

■総会・学会賞表彰式(16:30~17:30)

・総会:2021年度決算報告、2022年度予算案 ほか

・学会賞受賞者発表・表彰式

以上