■開催日時・会場

   日 時: 2011年7月10日(日) 13:30~15:30
        【学会設立30周年記念講演会】 16:30~17:30  
   会 場: 北海道大学 人文・社会科学総合教育研究棟(通称:W棟)W309教室
         (札幌市北区北10条西7丁目、地下鉄南北線北12条駅下車・徒歩10分)

■研究会プログラム 13:30~15:30

(1)13:30-14:00
石原真衣さん(北海道大学大学院 文学研究科 修士課程)
「「土人」から「先住民」へ-現代のアイヌ民族に関する文化人類学的考察」
1982年の国連における先住民に関する作業部会の結成を契機に、国際社会というアクターが表舞台に登場した。以降、アイヌ民族の自己認 識や自己表象は、それ以前とは異なる様相を呈するようになった。現代を生きる「先住民」を理解するために、国際社会が介入する以前の彼ら の自己認識や自己表象を検討し、かつての「滅びゆく民族」や「土人」から今日の「先住民」へと変貌する過程を考察する。アイヌ民族は、 様々な社会背景や時代背景のもとで、様々なアクターの相互影響を受けて「先住民」となった。その実態について解明する。

(2)14:00-14:30
周フィフィさん(北海道大学大学院 文学研究科 博士後期課程)
「北海道の国際観光イメージの生成及び変容のメカニズムに関する文化人類学的研究-「ポスト地震時代」の来道中国人観光者の実態及び受け 入れ対策を中心に-」
3 11東日本大地震後に激減した東アジアから来道する観光者が台湾や香港を中心に回復し始めているが、ただ中国大陸からの観光者は回復の兆しは見えない。根本的な理由は、単 一化されているマスコミの報道にあると思われる。3 11以来、東日本の揺れが日本全土の揺れ、更に日本の売りであった「安全」のイメージの揺れとなっているという歪曲されたイメージが宣伝されている。そういう中、インター ネットで流通する観光経験は、観光地のイメージ再生に大きく寄与する力を持っている。そこで、インターネットを通して国境を越えて共有さ れる観光イメージに着目し、観光における風評被害の実態を文化人類学的立場から迫り、払拭対策を試みる。

(3)14:30-15:00
井上淳生さん(北海道大学大学院 文学研究科 博士後期課程)
「日本社交ダンス界における「競技化」の進展と商慣行」
本報告の課題は、日本の社交ダンス界において進められてきた「競技化」の過程を整理し、そのもとで現在いかなる商慣行が展開されているの かを明らかにすることである。日本にとって社交ダンスとは元来、西洋のものである。本報告を、社交ダンスが明治期に日本に紹介されて以 降、どのような経緯で現在のようなものとして社会に位置付いているのかを、今後、人類学的に考察するきっかけにしたい。

(4)15:00-15:30
西村幹也さん(NPO法人北方アジア文化交流センターしゃがぁ 理事長)
「トナカイ飼育民ツァータンの生活変化 -”金”に翻弄されるタイガ社会-」
2000年ごろより外国人旅行客が増え、“ツァーチンセンター”が作られるなど組織的な観光業への適応を始めたトナカイ飼養民ツァータン は経済的に徐々に豊かになっている。そして、さらに、2009年秋には金鉱山採掘が始まり、特需が生まれるなど、彼らを取り巻く経済状況 は、周囲のモンゴル人たちより恵まれはじめたように観察される。この近年の社会変化によってトナカイの飼育方法や営地選択原理などにどの ような変化が起きているのかを考察してみたいと思う。